日向 HIMUKA
泣いた死神
(七) 泣いた死神

ピエロがいるあたりは、
まるでそこだけに霧がかかったように
ぼんやりとしていた。

ベッドは、へこみもしわもなく、
よく見ると、
座っているといううよりは、
正座をした格好で浮いているという感じだ。

そしてその顔は、
ピエロの顔というより、
被り物のようだった。

それにしても、
マスクをした幽霊なんて初めて見た。

もっとも、幽霊自体、
そう滅多に見るもんじゃないけど。

ぼくは、
すぐにこいつがミカを悩ませている
例の死神だと気がついた。

それにしても
何だか気の弱そうな死神だ。
ぼくの想像では、
もっとふてぶてしくて、
恐ろしげなやつだとばかり思ってたのに。

肩をまるめて、
両手をモモの上でそろえた姿は、
あの世の使いのイメージにはほど遠かった。
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