私の上司はご近所さん

赤くなっていると言われたことが気になり、頬に手をあてようした。その矢先、屈んで私の顔を覗き込んでいた部長の手がスッと伸びてくるのが見えた。

「まるで酔っているみたいだな」

部長の大きな手が、私の頬を包み込むように優しく触れる。思いがけない部長との接触に驚き、心臓がドキリと跳ね上がるのを自覚した。

「オ、オレンジジュースじゃ酔いませんよ」

「それもそうだな」

部長はクスッと笑うと、私の頬に触れていた手を離した。

頬が熱く感じるのは、日に焼けたせいじゃない。部長に触れられたからだ。

かろうじて平静を装ったものの、鼓動はまだドキドキと音を立てている。そんな私とは対照的に、部長は平然とブラックコーヒーに口をつけていた。

「私、そろそろ帰ります。ごちそうさまでした」

ふたりだけの時間を自ら切り上げようとしたのは、自分だけが部長の言動に振り回されていると気づいたから。

「そうか。送ってやれなくて悪いな。気をつけて帰るんだぞ」

優しくされればされるほど、チクリと胸が痛むのはどうして?

「はい。お先に失礼します」

「お疲れさま」

彼女がいる人を好きになるんじゃなかった……。

込み上げてきた涙を隠すために頭を下げると、急いで休憩室を後にした。

< 119 / 200 >

この作品をシェア

pagetop