私の上司はご近所さん

「別に翔ちゃんは彼氏候補でもなんでもないよ」

「だって、翔ちゃんとデートするんでしょ?」

「デートじゃないし」

映画が始まる前、ゴールデンウイーク最終日に翔ちゃんと出かける約束をしたことを結衣に話した。でもまさか翔ちゃんのことを彼氏候補だとか、ふたりで出かけることをデートだとか勘違いするとは思ってもみなかった。

翔ちゃんとの関係を否定しても、結衣はなおも食い下がる。

「ふたりきりで出かけるんでしょ?」

「そうだけど」

「だったらデートじゃん」

ゴールデンウイークだというのに出かける用事といえば、結衣と映画を観ることしかない。そんな私に、翔ちゃんは同情してくれただけ。だから今度の外出は、決してデートではない。

「結衣。前にも話したと思うけど、私、翔ちゃんにフラれているんだよ」

同期であり親友でもある結衣には仕事の悩みも、過去に翔ちゃんに告白して玉砕したことも打ち明けている。

「それは高校生のときの話でしょ。今は翔ちゃんの気持ちだって変わっているかもしれないじゃない」

「それはないよ」

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