PMに恋したら
「じゃあ尚更、もう一度チャンスをもらいたいな」
「え? チャンスですか?」
「名誉挽回するチャンスがほしい。実弥ちゃんにかっこいいってイメージを定着させたいから」
この言葉はどういうことだろうと首を傾げた。
「かっこ悪いところはもう見せたんだけど、もっと俺のことを知ってほしいんだ。良いところも、他の悪いところだって知ってほしいと今は思うよ」
照れた顔を隠すようにシバケンは目を逸らして下を向いた。そんなシバケンがどうしようもなく愛しいと思った。
「はい。もっと知りたいです」
「俺と実弥ちゃんの共通の記憶は、今ここから始め直してもいいかな?」
「お願いします!」
顔を上げたシバケンとお互い笑顔で見つめ合った。こんな風に近い距離にいたいと何度願っただろう。
「会いに来てくれてありがとう」
「いえ」
今日勇気を出して会いに来てよかった。
「あの、連絡先を教えてください」
「ああ、いいよ。遠慮なく連絡ちょうだい。仕事中でなければ大体返事できるから」
勇気を出して連絡先を聞いてシバケンも応えてくれたことが嬉しくなり満面の笑みを向けた。スマートフォンをかざしてシバケンとLINEで友だち登録をした。彼のプロフィール画面には柴犬の写真がある。
「柴犬……ですね」
「ああ、実家で飼ってる犬なんだ」
そのまんまだなって笑った。シバケンが柴犬を飼っていてプロフィール画像にしているなんて。
「まあ狙ってるんだけどね」
彼も恥ずかしそうに笑った。
「今度どっか行こうよ。ご飯食べたりも」
「是非! いろんな柴田健人さんが知りたいです!」
警察署前での長いやり取りを終えて、彼と並んで駅まで歩いた。昨日までとは心の距離が違う。そう確信していた。