棘を包む優しい君に
15.人のまま迎えた朝
 起きると朱莉は居なかった。
 嫌な予感がして飛び起きるとキッチンに立っている朱莉を確認してホッと息をつく。

「ごめんなさい。起こしちゃいました?
 昨日はコンビニばかりだったから、朝くらいはって………キャッ。」

 近くに来た朱莉を引き寄せてベッドに寝転がった。

「居なくなったのかと心配するだろ。」

 当然の訴えと思っていたのに笑われた。

「私は寝る時に裸になるかと思って心配してました。」

 クスクス笑う朱莉が憎たらしい。

「裸なのはハリネズミになるからだ。」

「そっか。そうですよね。」

 人のまま服を着て朝を迎えたのは初めてだ。
 感慨深くなって、少し戯言を抜かした。

「おはようのキスは?」

「え、だって人になってますよ?」

 上擦った声を出す朱莉の顔をこちらに向かせると有無を言わさずに唇を重ねた。
 柔らかい唇を堪能するようにゆっくりと重ねては角度を変えてまた重ねた。

 日に日に獣に侵食されている気がする。
 抑えられない気持ちは行動に現れていく。

 脇腹の辺りからシャツの下に手を滑らせた。
 細くてなめらかな体の線をなぞり、ホックを外す。

 しがみついてきた朱莉が「何もしないって……」と小さく訴えて、それが逆に健吾の気持ちを煽っていく。

「朱莉。ごめん。……したい。」

 しがみついて掴んでいた服をギュッと強く掴み直した朱莉が途切れ途切れに訴える。

「名前…呼ぶなんて……ずるいです。」

「うん。知ってる。ダメなのも分かってる。
 だから嫌がって。
 たぶんこのままじゃ襲うから。」

「け、健吾さん!」




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