芸人
第5章 夢
あの時、あいつが、僕をこの世界に連れて行ってくれた。
高校に入学した頃、母より10歳年下の彼氏が、引っ越してきた。
母が働いているスナックの店員だった。
母が、35歳の時に離婚したのが、きっかけで付き合うようになった。
だが、仕事辞めて、今は、毎日酒を飲んで家にいた。
口うるさい、乱暴な男だった。

「伸一、タバコ買ってきてくれ」

母を取られた気持ちが、あって無視していた。
いきなり後ろから蹴りが入った。

「聞こえているだろ!」

「わかったよ。買ってくるよ」

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