【完】『空を翔べないカナリアは』

恋人、というなまめかしい単語が出たので警察も一瞬言葉が止まったが、

「わかりました。では一昨日から島根に来て、昨夜は玉造温泉で恋人の方と宿泊されたということでよろしいですか?」

「はい」

「ではお帰りになられたら、担当の警官が事情をまたうかがうと思いますので、お答えいただければと」

「はい」

ではまた後日あらためて、と警察からの電話は切れた。

「…どうしたの?」

美優が貴慶の顔を覗きこむ。

「鶴見ベースが火災で焼けたらしい」

「ちょっ…それって、超大変じゃない!」

早めに帰ろう、と美優は気が気ではなかったらしい。



< 164 / 275 >

この作品をシェア

pagetop