優しい魔女は嘘をつく
完全に、壁ドン体勢じゃないですか、これは。




私の言葉にハッとした堂本くんは、すぐに顔を赤くして離れた。





「ていうかさ、なんでここにいたわけ?」



「さっき、堂本くんがそこの廊下歩いてたから」





立ち上がり、スカートについたごみを払いながら答えると、堂本くんは震える声で言った。




「俺、さっきまで自習室で勉強してたんだけど……」



「え、っ」




顔を上げると、堂本くんのひきつった顔が目に映る。背筋が凍り、ゾッとした。




じゃあ……さっき私が見たのは、堂本くんの″幻″?



もしかして、そんなに私は、堂本くんのことで頭が一杯になっていたのだろうか。




顔が火照るのを感じた。
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