【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
芳也がシャワーを浴びている間に、麻耶はソファーの前には小さいお皿に盛りつけた料理をいくつか並べた。

少しして戻ってきた芳也は並べられた料理に目を見張った。
「ありがとな。こんなに作ってもらって。疲れてないか?大丈夫?」

「大したことはあまりしてないですよ。今日はいらないかと思ってたし、時間もないので作り置きの物です。我慢してください」
少し恥ずかしそうにいいながら、麻耶もパスタを持ってソファに座った。

「十分だよ」
「これ味見したら結構おいしかったんですよ。アンチョビポテト。ウイスキーに会うってネットに書いてありました」
麻耶が指さしたお皿のジャガイモを芳也は口に入れた。

「あっ、うまい。うん。確かにウイスキーが進みそう」
「え?飲みすぎはよくないから、このメニューは失敗?」
そんな事を言いながら、
「こっちは鶏肉です。玉ねぎに漬け込んであったのを焼いただけですけど。あと、アボガドとエビのサラダ。足ります?足りなかったらパスタ作るので行ってくださいね。トマトソースです」
器用にスプーンでパスタを巻きながら麻耶はニコリと微笑んだ。

「ありがとう」
そう言った芳也の顔をジッと麻耶は見ると、
「よかった。ちょっと顔が戻った気がします」
「え?顔?」
「はい。帰ってきた時、緊張したような強張った顔してたから」
そう言って麻耶はホッとした表情をした。

「そうかもしれないな。やっぱりこれだけの大きなイベントは疲れるよ。それにアイリの事もあるしな」
料理を口に入れて芳也はゆっくりと言葉を発した。

(そうだよね。まだ社長っていっても30歳にもなってないんだもんね……)

改めて芳也のすごさを感じて、
「お疲れさまでした」
ニコリと微笑んだ麻耶に、芳也も笑顔を向けた。

この温かい時間が続くなら、この恋心なんてどうでもいい。麻耶はそんな事を思った。

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