【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「水崎麻耶さんですか?」
きちんとスーツを着た、30代後半のその男性は真面目な顔で麻耶を見た。

「あなたは?」
「答えて下さい」
「なぜ?」
「答えないなら肯定と見なします」

(何?ちょっと?)

「早坂アイリの使いです。少しお付き合い頂きます」
「ちょ!私の意思とか予定とかは関係ないんですか?」
その言葉にも、その人は全く表情を変えなかった。
しかし、麻耶はアイリの使いという事で、なんとなく要件が分かった気がして、諦めてその人を見た。

「それでどうしろと?」
「乗ってください」
ため息をつくと、黒の大きなワンボックスの後ろのスライドドアが開けられた。


おとなしく麻耶は車に乗り込んで中を見たが、アイリの姿はなかった。
「どこに行くんですか?」
その答えには答えてもらえず、麻耶は不安がよぎった。

車は20分ぐらい走ると、ビルの駐車場に入っていった。
「ここは?」
「事務所です」
その言葉に、アイリの芸能事務所だと理解して麻耶は車を降りた。
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