【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「もう帰るか?」

芳也の言葉に始も頷くとチラリと芳也を見て、

「俺は最終全館の施錠を確認するから、先帰ってくれ。俺はモデルは誰でもいいよ。女に興味ないし」
「お前って……。せっかくのその顔が台無しだな。サンキュ。じゃあ先に行くぞ。お疲れ」

芳也は「やれやれ」と言った感じで、軽く手を振ると事務所を後にした。

広い敷地内をゆっくりと芳也は見ながら駐車場に向かっていた。
緑の木々、花をこれでもかと多く入れ、非日常を出すことに力を注いだこの会場は敷地も広く、東京の街の喧騒が嘘のように静かだった。

(ようやくここまで来たな。後少しだ……)

芳也は空を見上げ、明るく輝く月を見上げた。

オープンをあと3か月に控え準備も大詰めだ。本社スタッフも式場スタッフも準備に追われていた。

ただ、オープン前にはマスコミ向けに大きなイベントも行う予定で、そのキャスティングの調整が難航していた。
「アイリか……」
芳也は呟くように言うと、ため息をつき歩く速度を速めた。

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