【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「お父さん、迷子にでもなったの?」
50代ぐらいの奇麗な女性は麻耶を見て、頭を下げると、
「案内して頂いて申し訳なかったです。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ楽しいお話をさせていただきました」
ニコリと笑った麻耶に、
「お嬢さん、お名前は?」
男性はそういうと、麻耶に目線を戻した。
「はい、水崎麻耶と申します」
ゆっくりと頭を下げると、「麻耶ちゃん」そう言って麻耶をジッと見た。
「うん、うちの孫の嫁にでもきてもらいたいぐらいだな」
冗談ぽくいって声を上げて笑うと、
「じゃあ、ありがとう」
そう言ってレストランに入っていった。

麻耶はなんだかほっこりとした気分になり、事務所へと戻った。


仕事も終わり更衣室で携帯を出すと、麻耶は少し悩んでメッセージを作った。

【今終わりました。何してますか?】

初めて彼氏の様な、プライベートを尋ねる内容を送ることに対して、少し悩んでから送るとすぐに返信が来た。

【家にいるから迎えに行く。朝の場所で待ってて】

ありがとうと、OKマークのスタンプを押すと、麻耶は着替えて職場を後にした。

まだ夏の18時半は明るく、早い時間に帰れることと芳也が迎えに来てくれるという事が、なんだかドキドキして落ち着かず気づくと待ち合わせの場所についていた。

(なんだか急に彼氏みたいでどうしよう……)

土曜日の人がたくさんいるのも忘れて、俯いて待っていた。

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