【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
口に含むと、炭酸が心地よく口の中に広がった。そしてなぜかまた涙が溢れそうになり、慌ててグラスを机に置くと膝を抱えて頭を埋めた。
「おい。隠れるなよ」
額をデコピンのようにはじかれ、麻耶はイラっとして顔を上げた。

「やっぱり泣いてる」
優しい顔でクスクス笑いながら、黒い瞳が麻耶を覗いていた。

「……うっ……だって……4年も一緒にいたら……やっぱり寂しい」

「そうか。本当に悪かったな。ついお前見てるといじめたくなるな」
「いじめたくなるって……」
涙を流しながら、睨みつけた麻耶の涙をそっと芳也は指で拭うと髪を撫でた。
その行動に、麻耶は驚いて目をまん丸くしたが、撫でられる手が優しくてまた涙が溢れた。

「ほかに好きな人ができた事すら気づかなかった。すれ違っていたことは気づいていたのに、気づかないふりをしてた。仕事がおもしろかったの」
「それはありがたいな」
「そうよ!社長のせいで……」
そこまで言って、麻耶は「ごめんなさい……」呟くようにいうと涙が頬につたった。

「悪かったな。おもしろい仕事をして。でも……いい仕事だろ?いろいろあるだろうけど」
悪びれた様子もなく言った芳也だったが、麻耶の頬の涙を拭う指は優しかった。
「お前は幸せになれるよ。いつも仕事で人の幸せを願っているんだから」
「そう……かな……」
なぜか優しい芳也に、戸惑いが隠せず麻耶は一気にシャンディガフを流し込んだ。
「おい!そんなに一気に飲むと……」
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