夢うつつ


 気がついたら菜月がこちらを覗いていた。
「緋炎さん!」
「ここ、は?」
「聖さんの店です。緋炎さんの叔父さんっておっしゃった方が助けてくれたんです」
「叔父?」
「はい。この間から会っている華弦さんという方です」
「華弦か……助かった」
 華弦と吉雄、あの二人のコンビネーションも凄い。
「報告は二人から受けたよ。災難だったね」
「師父……」
「怪我は浅い。今日はここで休んでいきなさい」
「……あぁ」
 そして菜月に部屋を出るように促した。
「ご苦労様、あれだけの妖魔、チカラ任せでは難しかったかな?」
「あぁ」
「菜月の索敵は陽光よりも正確だそうだ。守りと索敵向き。確定だよ。これで素性が分かれば最高なんだがね」
「陽光は元々……補佐と索敵。だろ?」
「そう、その通りだ。ただ、陽光の索敵も捨てがたい」
「何故?」
「菜月は正確すぎる。おおまかな情報さえ分かればいい時もある」
「大まかなのは陽光、そこから詳細は菜月、か?」
「そういうことだよ。適材適所は基本だ」
「それが俺には出来ない」
「それは信頼できるものに任せなさい。お前は策を練るほうにまわれ」
 昔からいつも言われる。
「分かってる。でも……」
「あれは揺さぶりをかけるのは病的なほどに上手い。それに乗ったお前が悪い」
「師父……」
「得手不得手だよ。ただ、それだけ」
 それだけ言って出て行く。

< 38 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop