政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「壁紙はアール・ヌーヴォーのウィリアム・モリスの当時のものなんだ。だから、そこだけはフレンチカントリーにはできなかった」

将吾さんは先刻(さっき)からわたしのオリーブブラウンの髪を撫でたり、搔き上げて弄んだり、自由気ままにいじっていた。
それでなくても、お風呂上がりは湿気を含んで膨張しやすくなるというのに、やめてほしい。

そういえば、この人はわたしがひっつめた髪をするより、たとえハーフアップであっても髪を下ろした方が好みだったな。

……まずい。なんだか、煽ってる?

「あ…ありがとう。こんなわたし好みのお部屋を用意してくださって……でも、ご足労かけたのは島村さんでしょう?
仕事だけでも忙しいのに、こんなことまで……なんだか悪いわ」

わたしは、なるべく将吾さんの気を逸らそうとして話を続けるために言った。

「……なんで、ここで茂樹が出てくるんだ?」

突然、将吾さんの声のトーンが暗くなった。

……あれっ、また地雷踏んじゃった?

「おまえ、マジでおれのこと、わかってないのな?」

将吾さんは、盛大なため息を吐いた。

「……わからせてやる」

彼の目つきが変わった。
わたしを抱きかかえたまま、部屋の奥にあるクィーンサイズのベッドへ歩き出す。

「えっ…ちょ…ちょっと……将吾さん!?」

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