政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

遠縁の上條大地の姿が見えた。
彼は慶人とは従兄弟(いとこ)同士なので、蓉子とも親戚ではあるが新郎側の席にいた。

「大地、ひさしぶり!」

わたしが声をかけると、彼が振り向いた。
将吾さんと同じくディレクターズスーツだ。

「おう、彩乃……結婚が決まったんだってな?」

大地がにやっ、と笑った。

……そうよ。あんたと同じ「政略結婚」よ。

と、冗談のひとつでも飛ばしてやろうかと思ったが、隣に振袖を着た小柄な女性がいたので、あわてて引っ込めた。

この人があのときの「市松人形」か。
臙脂(えんじ)色の古典柄の着物がすごく似合っている。
まだ小学生だった頃に一度見たきりなのに、同じような着物に同じようなミディアムボブだったからか、一目でわかった。


大地がわたしの隣の将吾さんを見て、態度を改めた。

「初めまして。上條 大地と申します。彩乃とは遠縁ですが、子どもの頃から従兄妹(いとこ)同士のようなつき合いです」

「大地は慶人の従兄弟(いとこ)で、同じあさひ証券に勤めているの」

わたしが将吾さんに説明する。

「この四月から、本社の経営企画本部長に就くことになりました」

大地の言葉に、将吾さんが少し目を見開いた。

「こちらこそ、初めまして。
この度、彩乃さんと四月に結婚することになりました富多 将吾です。TOMITAホールディングスの副社長をしております」

将吾さんが右手を差し出して、二人はがっちり握手をした。

「将吾さんは慶人とはKO大のときのゼミ仲間なのよ」

わたしは大地に説明する。

「そうか……世の中は狭いんだな」

大地はそう言って、(そば)にいた振袖の女性を引き寄せて紹介した。

「妻の亜湖です」

「上條 亜湖です。よろしくお願い申し上げます」

彼女は丁寧にお辞儀をした。

「おれたちの挙式と披露宴は来月だけど、入籍は慶人たちよりも早かったんだぜ」

大地が自慢げに言う。隣で亜湖さんが困ったように苦笑している。

……まだしょーもないことで張り合ってんのか、慶人と大地は。

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