政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「……彩」

真正面で対峙した海洋が、ゆっくりと間合いを詰めてくる。逃れようとしても、相手は剣道の有段者だから隙がまったくない。
わたしはじりじりと、後ずさりするしかない。

とうとう、壁際まで追いつめられてしまった。

そのとき、海洋の両手がわたしの顔の左右の壁に、ドンッとついた。

……かっ、壁ドンだっ!

海洋は日本を離れてずいぶん経つから、今のこの状況が、日本中の女子を胸キュンにさせる(もちろん相手次第でセクハラ確定になるけれど)必殺アイテムだということを……

……知ってるかな?

いや、日本にいたときだって、こういうことには疎かったから……知らないだろう。


「……逃げるな」

海洋は射るような鋭い目でわたしを見た。

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