いつか、らせん階段で
「それって・・・」

「夏葉、俺と結婚して。今度は絶対離さない。幸せにするから」

私は息を飲んだ。

「嘘でしょ」

「嘘じゃない。俺は夏葉じゃないとダメなんだ。夏葉、返事はyesじゃないと許さない」

「ばかっ。このヘタレ。今頃何を言ってんのよっ。ばか、ばかっ」
私は尚也の胸を叩いた。
涙がこみ上げてきて尚也が見にくい。

「ばかーっ」
そんな私の姿に尚也は笑いながら私の両腕をつかんで自分の背中に回した。
「ごめん、夏葉。ごめんって。いいから俺に抱きついてyesって言って」

「やだっ!いきなり何よっ!尚也なんて知らないっ」
私は抵抗した。

「何、いきなり言ってんのよ。私の気持ちはどうなるの。私の都合とか事情とか考えないのっ」

3年前に別れた元彼がいきなりプロポーズとか有り得ないでしょ。
嬉しいなんて事よりいろいろ理解出来ない。
尚也の腕の中で暴れた。
「はーなーしーてー」

暴れる私をガッチリ抱いた尚也も「離さないって言った」と譲らない。
私は涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。

「尚也!ティッシュペーパーちょうだいっ!」
大声で一喝したら、尚也はパッと離れてティッシュペーパーを取りに行ってくれた。

「はい」すまなそうな顔して私にティッシュを箱ごと手渡した。

「ばかっ」

私は尚也の視線を避けて受け取り涙と鼻水を拭いた。
メイクが取れてしまうけど仕方ない。もうたぶん手遅れ。

「ね、夏葉」
私の背中が温かくなった。
尚也が後ろ抱きにしている。あ、この感じすごく懐かしい。

「俺を夏葉の側にいさせて」
耳元で囁くなんて反則でしょ。

「夏葉、愛してる」

その一言に私の心が震えた。
結婚よりなにより尚也の愛が欲しい。

クルッと振り返って尚也の顔の正面を向く。返事の代わりに3年振りのキスをした。

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