夢現物語
北の方は、何も分かっていなかった。策士な性格なのに、人の心に関しては、とても疎いのである。

(逢いたい。)

桜が寝込んだ理由は、恋煩いだったのだ。

相手は、いつぞやの宴にて知り合った、忍。

逢いたくても、自分の意志で邸を出ることは、ままならない。

(これも、縁談を、蹴ってしまったからよ!それに、誰?蹴ったの!)

誰にもぶつけられない怒りに、毎日泣いていた。

(お願いよ、一度でいいから、逢わせて。)
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