御曹司と婚前同居、はじめます
呆けた状態のまま、店員によって瑛真の前に突き出された。


「ど、どうかな? 私には可愛すぎる気がするんだけど……」


返事はなく、上から下まで舐めるような視線を送られ、おまけにくるくるとその場を回された。

私は犬ですか。

冗談で三回まわってワンと言ってやろうかと思ったけれど、瑛真があまりにも引き締めた表情をしていたのでやめておいた。


「今すぐ抱き締めたい」


やっとのことで口を開いたかと思えば、とんでもないことを言う。

そばからは「あらあら」「まあっ」と頬を染めた女性店員の方々の声が聞こえてくる。

どうも彼は人目を気にしないところがある。それに巻き込まれる私の身にもなって欲しいのだけど。


「それは似合っているってことなの?」

「ん? これ以上にない褒め言葉だと思うんだが」

「どこら辺が?」

「抱きたくなるほど魅力的だという意味だが?」

「あ、もう何も言わないで」


ダメだ。安易に突っ込まなければよかった。

いつものように返り討ちにあってしまい、全身が熱く火照ってしまう。
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