御曹司と婚前同居、はじめます
「用がないなら帰らせてもらいます」

「マンションに戻ったところで、どうせ一人なんでしょ?」

「どうせ、ってなんですか」

「だって瑛真は今日もまやかさんと会っているし」

「え?」

「あれ? 聞いてない? って、言うわけないか」


仕事じゃないってこと? ――ううん。昨日だって会社にまやかさんといたわけだし、今日もきっとそうなんだわ。創一郎さんは策士だから、私が誤解するようにわざと曖昧に言っているのよ。


「一人でも、やらなくてはいけないことは沢山あるんです。本当に失礼しますね」

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ」


だったら怒らすようなことばかり言わないで欲しい。


「美和さん本当に知らないの?」


私の前に立ちはだかった背の高い彼は、今度はとても落ち着いた声を出した。

神妙な口振りに心臓の不快音が大きくなっていく。


「……瑛真は仕事だと言っていました。私は彼の言葉を信じます」


考え込むように黙ってしまった創一郎さんは、しばらくして大きな嘆息をこぼした。
< 164 / 200 >

この作品をシェア

pagetop