御曹司と婚前同居、はじめます
俺の言葉におじさんは目を丸くした。


「そうじゃなければ、堂園化成の経営が傾いていようが、そんなの関係なく美和と結婚していました」

「……そうか」


おじさんは複雑な顔をしている。

どうやら本当に俺の思惑には気付いていなかったらしい。


「正直我慢の限界はとうに超えていました」


だから、まやかみたいな面倒を起こす女と関係を持ってしまった。


「でも、このタイミングだったからこそ、美和も俺を受け入れてくれたんだと思います」

「そんなことはないと思うぞ。美和はずっと瑛真くんのことが好きだったんだから」

「昔の話ですよ」

「美和に聞いてみるといい。まあ、あの子が素直に話すとは思わないけどな」

「そうですね」


互いに頬を緩めて笑う。

美和の話をする時は決まって笑顔になる。

おじさんにとっても俺にとっても美和は可愛くて仕方のない存在だ。

だからこそ、おじさんの意思を尊重してきた。

恋愛結婚をさせてあげられないという負い目からか、幼少期から美和がやりたいということは全てやらせてあげたらしい。

自分の元に置かなかったのも、その方が美和にとっては窮屈のない生活が送れると思ってのことだ。

その甲斐あって、美和は自分のやりたい仕事を見つけることができた。

親元を離れていなければそうはならなかったと思う。責任感の強い美和のことだから、自分が堂園化成をどうにかしなければいけないと、沢山のことを犠牲にしてきたに違いない。
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