白貝と柏木
03
ー好きだって認めるまで待ってやる
ー堂々と観察して研究できるチャンスだと思えばいいでしょ!

そうだよね。
柏木の考えは変わらないみたいだし、こうなったらもう、開き直って、私も自分の好きなようにしよう。

柏木研究のデータを集めよう。

「柏木、好きな食べ物は?」
「…米。すごいベタな質問だな」

柏木と2人きりの放課後の教室。
柏木は昨日と同じように、私の席の前の座席を拝借している。

「だって知らないことだらけなんだもん、柏木。これだって大事なデータなんだよ?」
「あぁそう…あんたは?」
「私はパンが好きだな〜、あ、甘いものは好き?」
「好きってほどじゃないけど時々食う。でも缶コーヒーの甘いのだけは許せない」
「それわかる!私も!」

思いがけず共通点を発見した。

「音楽は何聴く?」
「色々聴くけど、好きなのはロック」
「私も!マルーンファイブ大好き!」
「俺はそれあんまり好きじゃない。俺が聴くのはガンズアンドローゼズとかメタリカ」
「ヘビメタかぁ〜、私はあんまり聞かないや〜。あ、休日は何してるの?」
「部屋でゴロゴロしてるか、友達に会うか、買い物に行く。…あとはバイトだな」
「えっ、柏木バイトしてるの?」

頷く柏木。

「週4から5で、普段は放課後だけど、シフト変わったり、人が足りないときは休日も入る」
「へぇ〜…」

思いがけず放課後の過ごし方の情報も得られた。

最近、新たにわかったことは、柏木の声についてだ。
柏木の声は低いけれど、重苦しさや冷たさはない。
毛布みたいな暖かさと柔らかさがある声をしてる。
ふかふかの毛布に包まれているみたいに心地よくて、ずっと聞いていたくなる。

だから柏木と話すのに夢中で、人の気配や微かな足音にも気が付かなかったんだ。
このとき、教室の外で私達を見ていた人がいたなんて思いもよらなかった。
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