coming call...
まただ… ~小学1年生~
まただ…




一階のリビングからまただ…



夫婦喧嘩だ。



私の父と母が喧嘩をするのは、私たちがいないときだ。
私たちが寝たとでも思っているのだろう。
うるさくて眠れない。
布団を被っても、部屋が静かで広すぎるから、父の怒鳴り声、母の怒鳴り声、犬の鳴き声全部聞こえてくる。

「喉も渇いたし、うるさいから一階におりるか…。」

私が階段を降りていると静かになった。
私の足音に気づいたのだろう。

「摩莉…どうしたの?」
と母。

さっきまでの、喧嘩なんかなかったかのように、父と身を寄せ合いテレビを観ている。
何も知らない人から見たら、きっと、仲の良い夫婦に見えるだろう。

「ママたちがうるさくて起きちゃったじゃん。喉渇いたー」
なにも知らないふり。

「ごめんねー、サッカーの試合観てたら盛り上がっちゃって…」
嘘つき。

確かにテレビにはサッカーの試合の生中継が映されている。
でも、私の父と母はサッカーの熱狂的なファンではない。
結果だけ分かればいいやくらいの人だ。

まぁ、いい。
お茶飲んで、寝るか。
私は冷蔵庫をゆっくりと開けた。
大好きなお茶をコップに注ぎ、ゴクゴクと喉を鳴かせながら、飲んだ。
使ったコップをシンクに起き、おやすみを言わずに自分の部屋に戻った。
お茶を飲んだらすっかり目が覚めてしまった。
本でも読むか。
私は、何度も本を読み返す派の人間だ。
いつも読んでいる本を手にとり、電気は点けず、読む。
1時間もしないうちに読み終えた。
本は、良い。
自分だけの世界に入ることができる。
勝手に世界を作ることができる。
本を読んだ後の達成感もたまらなく好きだった。


そんな、私の幸せな時間を掻き消す騒音がまた鳴り始める。


まただ…


一階のリビングからまただ…


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