意地悪上司は私に夢中!?
翌日、だるくてなかなか起き上がれなかった。

昨夜は永瀬さんと、『蒲田さん』と呼ばれた女性のことが頭をぐるぐる回って、ほとんど眠れていない気がする。

出社拒否したいくらいだったけど、会社に行かないと永瀬さんに会えないしな…と思う自分が馬鹿らしい。

永瀬さんにはもう他に恋人がいるのに。

電車から降りると、人波にうまく乗れずに端のほうををトボトボと歩きながら会社へ向かった。


「おはようございまーす」

いつもと同じ朝が始まる。

クマはコンシーラーで隠したから見た目は大丈夫。

ただし、頭の回転はだいぶ鈍っているかもしれない。

メールチェックをしたら、あろうことかいつもよりもたくさんのメールがきていた。

これだけでどれだけ時間が潰れるんだろう。

ひたすら画面を見つめてキーを叩くけど、さすがに目が疲れてぎゅーっと目元を押さえた。

「鈴原。これ両面コピー100部な。
寝ぼけてミスるなよ」

ハッとして差し出された書類を受け取る。

と同時に反射のように心臓が鳴る。

「はい」


コピー機から飛び出してくる紙を見ながらまた眠気に襲われる。

永瀬さんは昨日寝たんだろうか。もしかしたら朝まで…

うわーダメだ。思春期男子!

落ち着け。私はもう高校を卒業して10年も経つ大人の女だ。

余計なことは考えちゃいけない。

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