意地悪上司は私に夢中!?
このバーもまたお洒落。

値段が書いてない…絶対高い。

さっきのお店も透くんが奢ってくれたけど、私の持ち金じゃここの代金も全部支払える気がしない。

「大丈夫だよ。デートなんだから奢らせて」

心配していたら、そんな爽やかでスマートな答えが返ってきた。

乾杯をして、会社の話や休みの日の話、趣味の話、酔いもあって会話は盛り上がった。

カクテルばかり飲んでいたら、思った以上に酔いが回ってしまったらしい。

甘いカクテルはついついアルコール度数を気にせず飲んでしまう。

「大丈夫?」

ふらつく足で外に出ると、透くんに腰に手を回して支えられた。

支えてくれているだけなのに少し嫌な気分になる。

あまり触れられたくないと思ってしまう。


透くんに支えられながら、大通りのタクシーが停車しているところまで出た。

「今日はありがとう」

頭を下げたら、透くんは不満げな顔をした。

「ホテル、行かないの?」

爽やかな風貌に似つかわしくない言葉。

…だけど、これだけ奢ってくれて、明日は休み。

下心があっても当然かもしれない。

「…ごめんなさい」

「なんだよ。せっかく奢ってやったのに」

舌打ちと低いトーンの呟きに顔を上げた。

さっきまでとは違う、天使が悪魔に変わったような顔。

「…ごっごめんなさいっ」

私は逃げるようにタクシーに乗り込んでその場を後にした。

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