何度でも恋に落ちる
人の気持ちが冷めていく事はよく知っている。



温かい飲み物が必ず冷めるように

愛情も同じ。



冷めない熱などない。





だからいつか…


私や翼の中の熱も冷める日が来る。





「ちー。人はみんながみんな同じ感情を持ってるワケじゃない。浮気する人もいれば一途な人もいる。すぐ冷める人がいればずっと熱をあたためている人もいる。

ちーはただ、俺を信じて?俺はちーを信じてるよ」



「…翼」




本当に信じてもいいの?


ずっとそばにいてくれる?

裏切ったりしない?

私への気持ちが冷めたりしない?




どうして私は

こんなに弱くて臆病なんだろう。




信じる事が恐くて
翼を信じてあげられない。





人の気持ちの未来などわかるはずがない。

自分の気持ちの先すらわからないのだから…。




「…ちー。そんなに不安?」



未だに表情が暗い千夏に呟く翼。


千夏は翼の服の裾を強く握り締めている。




「じゃあ、ちーの不安がなくなるものあげるよ」



翼は千夏とリビングに戻り、引き出しから小さな箱を取り出した。



翼が箱を開くと中にはシンプルなデザインの指輪が2つ並んでいた。




「何、これ」

「ペアリングだよ。お祭りの時買おうって言っただろ?」



翼は千夏の薬指にペアリングをはめた。




「本当はクリスマスに渡そうと思ってたんだけど、今渡した方がいいかなって思ってね」



翼は自分の薬指にもリングをはめると、リングがはまっている千夏の手を握り締めた。




「これで俺とちーは繋がってるよ。だから大丈夫。俺はちーから離れたりしない」

「…ありがとう、翼」





信じる気持ち。



恐くても不安でも

誰かを信じる事が未来を変える。




そう思った。
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