物理に恋して
カシャンと鍵をかけると、ドキマギしながら、元の位置に座った。
先生はタバコの煙を逃がしながら、手招きをする。
わたしはぎこちなく先生の前に立つ。
…まるでわたしたちが始まった時みたいだ…。
「で、何を気にしてんの」
先生はわたしの頬に触れる。
「先生と、」
「俺と?」
その手は優しくわたしの頬にかかる髪の毛を梳いた。
「わたし…」
「おまえ?」
下から覗き込まれる目に、甘い予感がする。
だけど、騙されちゃだめだ。
キスとかじゃなくて、言葉が聞きたい。
気持ちを知りたい。
先生を見つめ返す。
強い視線に、逸らしそうになる。
「…せん」
「二度と言わねーから良く聞けよ」
先生がわたしを見つめたまま、そう告げる。
もしかしたら、聞けるのかもしれない。先生から、ずっと聞きたかった、二文字の言葉を。
ぐいと頭を引き寄せられて、わたしは思わず先生に傾いた姿勢になる。
先生に触れられてた髪がはらりと落ちて、伸ばした先生のうでにかかった。