物理に恋して
「先生、携帯の番号どうしたの?」

「あ─…」



少し視線を空中で泳がせて、右手で反対側の襟元を触りながら答えた。



「原田?」

「…優希ちゃん?」

「そう」

「優希ちゃんって その…」

「…かもな」



困ってた表情をしていたはずの先生は少し笑って、タバコを取り出していた。



いつもの先生って感じ。


優希ちゃん…



やっぱりさっきの優希ちゃんは、おかしかったんだ。



でも、不安だけはなかった。


もし知られていたとしても、優希ちゃんなら大丈夫だと、訳のない確信があった。



もしかすると先生もそうなのかもしれない。



「美月」



そう声がしてゆっくりと先生に視線を向ける。



「夏休み、デートする?」
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