俺様御曹司に飼われました
「どうすんだよ」


「んー、好きな人できたとでも言っとくよ」



これ以上、悪魔の家にいるわけにはいかない。惨めな思いはしたくない。

あの人があたしへの愛の言葉を紡ぐたび、あたしは辛くなるんだから。

好きだけど。
好きだから、サヨナラをする。



「俺、使っとけよ」


「え?」


「あの御曹司のことだ。好きなやつを見せるまで引かないぞ」


「……たしかに」



でも、そうしたら音哉の立場が悪くならないだろうか。
仮にも悪魔はあたし達の会社の社長の息子だ。



「大丈夫だよ。うちの社長は息子の言いなりになるような人ではないから」



あたしの考えを読み取るように、音哉がにっこり笑う。



「そうだよね……」



あたし達の社長は、偉そうな態度を取ることもなく、社員みんなに気さくに話しかけてくれる。
そんな社長だ。


どうして息子はあんなふうになってしまったのか謎だけど。

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