あなたの溺愛から逃れたい
その後も、私と創太の恋人関係は続いた。
いけないと分かっていながらも、人目を盗んで創太の部屋で何度もキスをして、何度も身体を重ねた。

創太は周囲に話そうとしてくれたけど、それは私が拒んでしまった。
身分の違いが大きすぎる。反対されるのは目に見えていたから。
創太はそんなこと気にしなくていいと何度も言ってくれたけど、最終的には私の意向を尊重してくれた。


そしてそれぞれ高校を卒業した。
私は斎桜館での仲居業に専念することにし、創太は経営等を学ぶ為に大学へ進学した。旅館から通える距離の大学だったから、会える頻度は今までと何も変わらなかったけれど。


普通の恋人同士とは少し違う、周囲には内緒の恋。
だから一緒に映画を観に行ったり、買い物したり、そういう普通のデートはしたことがない。
だけど、家に帰れば毎日会える。それだけで充分だった。



だけど。


創太が大学を卒業すると、当初の予定通り、ちょうど創立されたホテルの経営には旦那様と女将が回ることになり、旅館の方の経営は創太に任されることとなった。グループの責任者はあくまで旦那様だから、創太の肩書きは〝若旦那様〟のままだけれど。


ホテルの経営も上々で、関連雑誌やテレビ等のメディアでも斎桜館はより取り上げられるようになった。

勿論、二十代にして旅館の責任者を誇る創太にも世間の目は向き、手腕だけではなくそのルックスや人柄等にも人気が出て、創太は今やちょっとした芸能人よりもよっぽど有名人だ。


それでも創太は、変わらずに私を愛してくれる。私の気持ちが固まったら結婚しようとも言ってくれている……。


だけど、創太が有名になればなる程、斎桜館が有名になればなる程、私がいかに創太と釣り合わないか思い知らされて。
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