王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

母が割って入る。
お陰でそれ以上、父はなにも言わなくなった。

派手なのはじゅうぶん承知の上よ。

でもこうしなきゃいけない理由があるの。
両親には決して口が裂けても言えないけれど。

「では、行って参ります」

父と母に軽く会釈をする。

「あ……ああ。くれぐれも失礼のないように」

父はそう言いながらも不満げな表情でいたが、母はそんな父を肘で軽く腕を小突くと、ニコリと微笑んで手を振り快く送り出してくれた。


外にはいつもの馬車が待っていた。
それに乗り込み、いざ城へと向かう。

馬車の中でひとりになって、緊張がどっと押し寄せてきた。
それは城に近づくにつれて大きく膨らんでいく。

上手くかわせるだろうか。
王太子様の目を欺くことができるだろうか。

その不安に押しつぶされそうになって、たまらず胸の辺りの布をギュッと掴んだ。

……大丈夫。
大丈夫よビアンカ。

怖がってはダメ。
怯んではダメ。

あなたはできるの。必ず上手くいくから。


心の中で自分にそう言い聞かせた。


――やがて、馬車は目的の城へと着いた。


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