王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

そう会場内の者たちに叫ぶと、登場を告げるラッパを吹き鳴らした。


玉座のある一番奥の扉が開かれ、その姿を現す。

その瞬間、私の心臓がドキリと大きく高鳴った。



なぜなら、王太子様の姿はあのときと同じだったから。


――ふいにあの夜のことを思い出す。


甘く微睡むような美味しいお酒。

弾む会話に王太子様の笑い顔。

そして、私を愛おしそうに見下ろす、王太子様の顔――……。



唐突にその表情を思い出してしまって、恥ずかしくなり一気に胸の高鳴りが止まらなくなる。



え?どうして?
その後のことは記憶が抜けて、まったく覚えていないはずなのに、なぜその表情がいきなり浮かんでくるの?


……まさか。
この記憶は、ただの妄想よ、ね?

あのときと同じ格好だったから、変に意識してしまったゆえのもの。


あるわけない。
王太子様が私に向けて、そんな表情を浮かべるなんて。


冷静になるようにと、頭を左右に振る。

深呼吸、深呼吸。

気持ちをしっかり持たないと。
ちょっと昂っているんだわ。

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