王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「それよりも、もう少しで夕食の時間です。早く着替えをして下さいね。そのドレスでは食べたくても食べられないでしょう?」

「う……、そ、そこまで分かって」

「とても苦しそうに息をしているのが見ていて分かりますよ。無理したのですね、私にバレまいと。でももう諦めて素のビアンカでいて下さい。その方がお互いに居心地がいいでしょう」

「本当によろしいのですか?私の地を出しても。もしかしたら呆れてしまうかもしれませんが」


後悔しても知りませんよ?と言わんばかりに、ファリス様に問う。

私をどんな風に想像しているかは分からないが、猫を被らなくていいというのなら、お言葉通りそうさせてもらうし、その方が私も疲れなくて済むだろう。

それで仮にファリス様が、"こんなはずではなかった"と後悔しても、それは私のせいではないし。

むしろ今の時点では冷めてくれた方が助かる……、なんて考えている自分がいるわけで。


しかし当のファリス様は、その問いに大いに声を出して笑った。
まったくといっていいほど、その点を危惧してはいないようだ。

「ええ、構いませんよ。どんどんと出していってください。その方がより刺激的で面白い毎日になりそうだ。楽しみですね、これからが」

予想もしない返答に、つい一言漏れる。

「……変な人」

「なにか言いましたか?」

「いえ、別に」


……ダメだ。
なにを言っても、ファリス様には敵わない。

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