王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
王妃様の部屋を出る。

自室へ戻ろうと廊下を歩いていると、廊下の先のほうから駆け寄ってくる人物が見えた。

その姿にドキリと胸が鳴る。

白いシャツとトラウザーズ。
ブロンズの髪を靡かせ、こちらへと近づいてくる。

その表情は少し険しかった。
でも怒りの表情ではない、どこかしら心配そうな顔。


「……ファリス様」

名を呼ぶと、ファリス様の表情が和らぐ。

そして目の前にまでくると、荒む息を整えながら、ファリス様は私の身体を自身の身体へと引き寄せた。


「そのまま外へ逃げてしまったのではないかと、必死に探して……!良かった、見つかって……!」

「王妃様のお部屋にいて、お話を聞いていたのです。ごめんなさい、心配かけてしまって」

「いいえ、私が悪いのです。ビアンカの気持ちも考えず、自分ばかり暴走して……!」


ぐっと身体にかかる力が強くなった。

まるで離したくないというように。


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