イジワル男子の甘い声
「つまんないって…!嬉しくてここまで走ってきたっていうのに─────」
「頑張ったな」
え?
「正直、最初のお前のレベルだと、俺が教えても70点がギリギリラインだったと思うし。この点数は確実に、ここで勉強した時間以外にもお前がちゃんと怠らなかった証拠じゃないの」
「柏場くん…」
ずるいなぁ。一度落としてあげるなんて。
普通に褒められるより倍嬉しくなるに決まってるじゃん。
「まぁ、勉強見てやるのなんてこれが最初で最後だから。次は自力でやれよ」
「うっ、はい」
口が悪くて一見冷たいように見えるけど、この数週間で、柏場の印象がだいぶ変わった。
♪〜♪〜
突然、柏場の電話が鳴り出してリビングに響く。
「…っ、まじかよ。…ちょっと出てくる」
スマホを開いて固まる柏場。
「え、今から出るの?じゃあ私も家に」
「いい。ここにいろ。すぐ戻ってくる」
「っ、でも…」
柏場は、「いいから」とだけ言って慌てて家を飛び出していってしまった。
なんか、柏場変だな。
相変わらずシーンと静かなリビングで、彼を待つ。