不器用王子の甘い誘惑

31.会社のコンセプト

　上半身裸の松田さんに目がチカチカした。
　男の人の体という感じで………うわぁ熱い。思い出しただけで顔が熱い。

　しかもシャワーを浴びているのを待つってどういう状況？なんかヤダ！

　しばらくして松田さんが出てきて、さすがに服を着ていてホッとした。
　ラフなルームウェアの松田さんがレアで普段とは違ってドキドキする。

「何？いい匂い。お腹空いてたんだ。
　元気になったみたいだ。」

「さすがにここで寝させてもらうわけには……と思って夜は帰ったんです。
　それでお粥と、お鍋を……。
　どのくらい元気になってるのか分からなかったので。」

　帰らないでと言われたけど、さすがにこっちが風邪を引きそう……ってうつされたわけじゃなくて、人の家で布団とかどうしたらいいか分からないし。
　もうめっきり寒くなったから。

「ありがとう。
　なんでも食べられそうだよ。」

　食器なんかを出してくれて、本当にもう大丈夫みたいだ。

「良かったです。大丈夫そうで。」

「ねぇ。今日はまだ日曜？」

「はい。麗華さんからこの土日はしっかり休むようにって。」

「そう。………紗良は今日は？」

「今日ですか？今日は………。」

　元気になったのなら帰った方がいいよね。
　いつまでも居座るのは……。

「前に言ってたＤＶＤ鑑賞しない？
　どうせ俺はあんまり出かけない方がいいだろうから。
　付き合ってくれると…嬉しいんだけど。」

　ＤＶＤ……一緒に見ようって言った。

　なんて返事をしたらいいのか迷っていると松田さんが言葉を重ねた。

「分かった。言い方を変えるよ。
　紗良と離れたくないんだ。
　ＤＶＤなんて口実だけど……。
　一緒に見て欲しいな。」

　な、にを………。

「急に練習されると心臓がひっくり返ります！」

「そうなの？」

　クスクス笑う松田さんの前に乱暴にお皿を置いた。

「早く食べてください。」

「あぁ。ありがとう。」

「私も……ご一緒してもいいですか？」

「もちろん。」

　松田さんが口に運ぶのを見ないようにしてもドキドキする。

　ねぎや白菜、それにきのことか……とにかく野菜を入れて、後は鶏肉と煮込んだ鍋。
　おしゃれなものを食べてそうな松田さんの口に合うかどうか………。

「……美味しい。あったかい味がするね。」

「良かった……。」

　普通を装っているけどドキドキする。

　何？さっきの。
　紗良と離れたくないって……。

　練習だよ。練習……。