不器用王子の甘い誘惑
38.クリスマス
 クリスマスの予定を聞かれて「予定あります」なんて言ったら拗ねるくせに。

 そんなことが思い浮かぶ自分に笑ってしまう。
 つりあうかなとか心配してたのにな。

 もちろん今でも道行く人に振り返られる松田さんの隣を歩くことに気が引ける時もあるけれど………。
 離れると自然に距離を詰められて、離れては詰められ、離れては詰められ……前は壁ギリギリを歩いたこともあったっけ。

 有無を言わない距離感に慣れざるを得なくて……。
 さりげなくて、時には強引な松田さんの隣は慣れてしまえば心地よかった。

「返事は?
 何か良からぬことを考えてた?」

 すぐ近くで聞かれてドキリとする。
 いつもの距離感には慣れても、突然の息がかかるくらいの近さには慣れようがない。

 さりげなく距離を取って「どうだったかなぁ」とはぐらかしてみる。

 松田さんはさ。近くで話したってなんとも思わないんでしょうけど。
 自分が整った顔立ちのイケメンで至近距離厳禁なの分かってないよ。

「どうだったかなぁってなんだよ。
 ダメだよ。強制参加。
 イブも一緒に過ごそう。
 プレゼント用意するから。」

「プレゼントはプレッシャーです!」

「いいよ。紗良は用意しなくても、俺、欲しいものあるし。
 その日はお泊まりするでしょ?
 紗良自身を……。」

「!!!しません!」

「フッ。そんなに嫌がらなくても……。」

 たまにこんなことでからかわれるけど、キスすらしたことなくて………。
 良く思えば大切にされてるのかなって。
 悪い方にとると、魅力ないとか?って。

「何か……用意します。必ず。
 あ、でも前みたいにすごい所に食べに行くのはやめましょうね?」

「…………。」

「もしかしてもう予約してくれたとか?」

 顔をそらす松田さんは可愛いけど!

「クリスマスディナーは緊張するので、今年は一緒に作りませんか?
 ちょうど土日ですし。」

「紗良の手料理?」

「松田さんもですよ!」

「仲良く作るのも楽しいかな。
 分かった。
 じゃまずは買い物から行こうね。」

「はい。」






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