【短】君とホットケーキ
君とホットケーキ


 *



 その日はとても静かな朝だと思った。


 土曜日だったし、わたしの住むアパートの人たちはほとんど社会人。だから、いつも通り朝の六時に起きても静か。


 わたしだけが出勤かって思うと余計に憂鬱になる。


 十月の澄んだ空気でも、わたしの眠気を一気に覚ましてくれない。よく眠れなかった朝はいつもそうだ。


 それでも、今日は遅刻する訳にはいかない。


 わたしはキッチンに立って、フライパンを用意した。


 彼を起こさないように。出来るだけ音を立てないように。


 慎重にゆっくりと冷蔵庫を開ける。
 それでもドアポケットに入ったドレッシング類がぶつかり合って、カチャンと音を立ててしまった。

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