この幼なじみ要注意。



「い、いか……ないで…っ…」


とっさに動いた身体は知紘の腕を掴んでいた。

静かな廊下に弱く小さな自分の声。

今のわたしにはこれが精一杯……。


知紘の腕を掴む自分の手が小刻みに震えているのがわかる。


こんなことしたって、もう遅いって…


そう思うのに、止められなかった。


怖くて上を向くことができない。
下を向いて、ただ知紘の反応を待つだけ。


「ちょっとぉ、知紘くんは今からわたしと遊びに行くんだけど〜?その手離してよ」


ギュッとますます手に力が入る。



離したくないって……

渡したくないって……


心の中の自分が叫んでる……。


「……離して」


だけど、それは届くことはなくて。


拒むような低く冷たい声を拾った。
それと同時に瞳にうっすら溜まる涙

そして、簡単に手を振り払われた。


突き放されることが、こんなにも辛いなんて……。

< 193 / 317 >

この作品をシェア

pagetop