酒は飲んでも呑まれるなかれ
ローテブルの方に案内され、お行儀悪くもラグの上に座り、ソファーを背もたれにしている。



「待たせたな。つまみとワインだ。」



そうして、開けてくれたワインは甘口でフルーティーで飲みやすい。


「課長、これ美味しい!」


チーズをつまみながらも美味しくワインを飲んでご機嫌になる。



そうしてご機嫌なまま愚痴り始める私。



「3年よ!3年!アラサーと3年付き合っといて他に好きな人が出来たから別れようってなんだオメーってなりません?!!」


そう愚痴ると



「それだけ付き合えばそろそろ結婚するかってなるところだろうな。伊月男を見る目がないな。」

ニヤッとしながら答えてくれるこのイケメン。

同意してくれるが、私もけなされてる・・・



「普段ツンツンしてたって、彼には少しは甘えたりしたいのに、自立した大人の女だよなとか言われたら無理だし!やっぱあんな奴向いてなかったんだ!これからはバリバリ仕事して、お局様として堂々と居座って老後に向けて貯蓄する!もう男はいい!!要らないモン!」



ぐずぐず言いながらワインを一気にあおる。



「要らないのか?お前のツンもデレも受け止めてドロドロに甘やかしてやれる男が居ても?」



「そんな奇特な人いるわけないもん。一生独身通してやるぅ!」


ぐすぐす、ずびずび泣きながら言うと



「それ、お前納得してないな。しょうがない奴だな。そろそろ強がるのやめて目の前の男に甘えてみたらどうだ?千波。」


いきなり名前を甘ったるい空気に乗せて呼ばれて
不覚にもキュンて来てしまった私。
何となく察せられる単語を拾っていたけれど、あえてスルーしていた事を突きつけてこられたにも関わらずである。


お酒も相まって私いま、絶対弱ってる。



「ほら、こっちおいで千波。」


グラグラする、心と身体を持て余している。
確かにこれだけ聞いてくれる課長なら甘やかしてくれるだろう。
しかし彼はイケメン御曹司様である。
躊躇い、動き出さない私に



「来ないなら捕まえるけど。来るのと捕まるのどっちが良いんだ?千波。」



甘くて優しいその声と表情に弱り切ってた私はついに陥落した。
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