凪君は私の隣で笑わない

それもそれでどうだろう。


「てかさ、黒羽、美優のほう全然見なかったね」


……グサリと胸に刺さる言葉をありがとう。


凪が美優を見る日なんて、もう来ない。

美優はそう、わかっていた。


「美優は黒羽と仲直りしたいとか思わないの?」

「思う……けど……」

「けど?」

「私、嫌われてる……」

「それ、本人に言われたの?嫌いって」


言われてない。

そもそも、最近凪と話してない。


「それってさ、自分で勝手に決めつけて、逃げてるだけでしょ」


……またグサリ。


この遠慮のなさはいかがなものかと。


「挨拶くらい、すればいいじゃん」


挨拶、くらい……?


「なにも知らないくせに……そんな簡単に言わないで!」


それができないから、悩んでいるのに。

灯にとっては、それくらいのことかもしれないけど、美優からしてみれば、難儀なことだ。


「……ごめん」


「私こそ、大声出しちゃって……」


といっても、周りの音であまり遠くには届いてなかったみたいだ。


「でも、なにもしないままもよくないと思うよ。もし今の関係を変えたいなら、自分で行動しないと」


灯の言っていることは正しい。

それくらい、わかってる。


だけど、できる自信がなくて、美優は頷けなかった。

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