コガレル ~恋する遺伝子~
ガレージで成実と車に乗り込んだ。
エンジンをかけると、車を発進させる前に聞いた。
「俺が今マスコミに張られてるって分かってんでしょ?」
「もちろん。
ここに入れてもらう時にも、それらしい人が居たもの」
成実は笑いながら助手席でシートベルトをしめた。
「どうして今日、彼女がうちにいるって思った?」
俺は誰にも言ってない。
葉山さんが住んでることを。
「圭、最近仕事終わったら飛んで帰るんだもん。今日だって収録巻きたくてソワソワしてたし。来てみたら、ビンゴ!」
冴えてる私を誉めて、みたいな顔を向けてきた。
ビンゴじゃねーし。
さっき聞いた通り、親父の婚約者だよ。
「週刊誌、どこで手に入れた?」
「収録の後、涌井さんと事務所に行って。女史のテーブルから」
涌井のやつ、余計なことしやがって。
「盗った、ってこと?」
「バレてたけど」
もう俺の口からは、ため息すら出ない。
次に載るであろう記事に女史は、何て言うだろう?
リモコンでゲートを開けると、車を走らせた。
成実をマンションに送り届けるために。