コガレル ~恋する遺伝子~



「准を産んで二日後に母は亡くなったから」

 それって病気か何かでしょう?

「生まれたての准君にはどうすることも…」

 圭さんは頷いた。

「子供の頃は学校で母親の話題になると暴れたり、喧嘩したり、手がつけられなかった」

 今の准君からは想像できない。

「だからうちでもいつの間にか、母親は禁句になった」

 今度は私が圭さんの手を握った。
 准君の怪我の手当てをしてた、っていつか言ってた。
 この屋敷の中で、黙々と手当てしてた兄弟を想像したら切なくなった。

「准が母親の話をするなんて珍しいよ」

 圭さんが私の手を握り返した。


「きんし。」

 きんし…
 今、何の話をしてたっけ?

 きんし?
 禁止?


「准の部屋で二人っきりになるの禁止」


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