極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
何をされるのかわからないまま狼狽えて、ぎゅっと目を瞑る。
耳に再びシュッという音が続いたかと思えば、斜め下の方からカチッという音がした。


「真帆が信じようとしてくれたのは嬉しいけれど、その辺りの、不明なところをはっきりさせるからもう少し待ってて」


ぽんっと頭を軽く叩かれて、体温が離れていくのがわかって目を開けた。
微かな圧迫を感じて胸元を俯けば、さっき外されたはずのシートベルトがなされていて。


隣からまた、シュッ、という音。
見れば、朝比奈さんが自らもシートベルトをしているところだった。


拍子抜けしてうっかりぽかんと見つめてしまい、彼が気付いてくすっと笑う。


「送るよ。どうかした?」

「いえっ! 別に!」


何かされると思ったなんて、恥ずかしくて言えない。
けどくすくす笑っているところを見ると、彼は気付いているらしい。

もっと言えば私が勘違いするようにわざとあんな近づいてシートベルトをかけさせたような気がする。


「……いつまで笑ってるんですか」


程なくして走り出してもまだ、朝比奈さんの横顔は機嫌良さげで、むかついた私は仏頂面で彼を睨んだ。


「ごめんね。これ以上一緒に居ると僕が我慢できそうになくて」


って、その返しが既に、私が期待を裏切られて怒ってるという意味にしか聞こえない。
別に期待をしたわけじゃない、ちょっと驚いただけだ。


「そういうこと言ってからかうのやめてください」

「ほんとだよ」


ちらりと向けられた流し目は色っぽくて、また私の顔色は正直に反応してしまうのだけど。
これ以上からかわれたくなくて、私は言い返すことは諦めた。


私たちの今の関係は、まだ付き合っているわけじゃないけれど、なんだか妙に、以前の私たちよりも艶ぽくて、それでいて遠慮がない。


あの頃の私たちはもういないけど、これはこれで悪くない、と思える。
今の私たちにしかできない、答えの出し方もできる気がする。


だからもう、私は三年前のことを今から掘り返すよりも、今の彼を見つめてどうしたいか考えようと思ったのだけれど。


翌日早速、あの頃の私ならコソコソ隠れていじけてしまいそうなシーンに私は出くわすことになる。


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