極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
東武に来てみれば、店長ともう一人の店員が接客をしていて吉住さんの姿は見当たらず、気付いた店長に目配せしてから、従業員出入り口からバックヤードに向かう。
倉庫には各店舗ごとにスペースが区切られていて、そこに吉住さんの姿を見つけた。
彼女は、何やら一心不乱にギフト商品の入った段ボール箱を右に左にと仕分けしている。
しかも真後ろから見ていれば、随分とたくましいというか。
どっさどっさと力強い動きで仕分けしては、箱にマジックで数を記してと商品整理に没頭していた。
この時期、夏季商品のジュレやプリンなどの水物商品が増えるので、かなり重いはずだけど。
「お疲れ様。手伝うよ」
「えっ?」
ジュレのギフトが詰まった段ボール箱を前に腰を落としていた彼女が、驚いた顔で僕を見た。
そして数秒固まっているので、もしや顔を忘れられたかと思った。
「朝比奈です。エリアマネージャーの」
「えっ! いえ、はい。もちろん覚えてます!」
段ボールを一度置いて、彼女は慌てて背筋を正し恥ずかしそうに俯いた。
「す、すみません。すごい格好で」
すごい格好、とは。
さっきの、がっつり大股開きで腰を屈めて、箱を持ち上げようとしていた格好のことだろうか。
まあ確かに、上品とは言えないけれど。
「仕方ないよ、かなり重いでしょう。これはこっち?」
彼女の足元にある段ボールを引き寄せて持ち上げる。
彼女の方は、順調のようで良かった。
寧ろ、あまり誰もしたがらない倉庫整理を、この短い期間で随分手際よくやっているように見えた。
「すみません、在庫確認をしてて。私がやりますから」
「いいから。どこ?」
「……そこ左端に……重いので一番下に」
「了解」
聞けば、数の確認は終わっていて後は取りやすい順に積んでおくだけのことらしい。
しきりに遠慮する彼女に構わずそのまま倉庫整理を手伝ってから、ちょうど良いので休憩をしながら彼女の話を聞くことにした。
順調なら良いがついでだし念のため、と思ってのことだったが。
聞いて正解だった。