春になったら君に会いたい


「リハビリ?」
「ん」
正晴の問いに俺は頷いた。病院にいる間は、せいぜいリハビリくらいしか用事がない。正晴もそれを分かっているのだろう。

「楽しかった?」

「んなわけあるか。……にしても、お前が日曜に来るのは珍しいな。何かあるのか?」

意地悪そうな笑顔で聞いてくるのをサラッと流して、逆に質問した。いつも日曜日はバイトに行っているはずだ。



「……冬、頭大丈夫?」

「は?」

正晴が馬鹿にするような感じで言うので、俺は慌ててカレンダーを確認した。
今日は確か三月七日。その数字は土曜日の列の中にある。


「今日って日曜日だったんだねー。知らなかったぁ」

わざとらしい声で正晴が言う。イラッときたが、間違えたのは自分なので何とか抑え込むしかない。


「しゃーねーだろ。ずっとこんなところにいたら曜日感覚狂うわ。とゆうか、頭大丈夫は言い過ぎ」

「ごめんごめん」

ヘラヘラと笑って謝ってくるが、謝罪の意など感じられるわけもなく、俺は正晴を睨んだ。それを受けてなお笑っているのだから、更に怒りがたまる。まあ、もうこういうやつだと諦めるしかないのだが。



「で、そんなことはいいんだけどさ。その女物のタオルは何?」

ひとしきり笑った後、正晴はそう聞いてきた。俺は急いでタオルを背中に隠す。こんなものを持っていたらもっといじられるに違いない。


「べ、別に何でもねーよ。盗んだとかじゃないからな」

我ながら怪しいことを言ってしまった。口が滑ったとはまさにこのことだ。いや、それだと俺が本当に盗ったみたいになるので、あくまで事実を述べたとだけ言っておこう。
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