春になったら君に会いたい


「のぞみ、はよ」

「冬くん、おはよう! って、もうお昼すぎだけどねー」

「外くそ暑かった。溶けそう」



夏になった。

まだ六月上旬だというのに、熱中症になりそうなほど暑い。

まとわりつくような熱気にに辟易しながら、のぞみの見舞いに来た。病院内はクーラーがついているので快適だ。


「ほらこれ、あの漫画の最新刊出てたから買ってきた」

「え、ほんと!? うわー、表紙かっこいい」

「俺は読んだし、貸すよ」

「ありがと、あとで読むね!」

なんでもない会話。出会ったばかりの頃は少し恥ずかしかったりしたが、さすがにもう慣れた。まあ、のぞみの方は最初から変わらないけど。



「あ、そうだ!」

急に彼女が言った。顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。

「私ね、一時退院の許可出たんだ。来週から十日間」


少し驚いた。俺たちが知り合ってから、のぞみはずっと入院しているからだ。正直、外にいる姿は想像出来ない。


「良かったな。おめでと」

純粋に良かったと思う。病院にずっといたのだから、外に出られるというだけで、相当嬉しいだろう。俺が素直に祝うと、のぞみは大きく頷いた。

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