春になったら君に会いたい



「ーーで、のぞみを家まで送って終了」


俺は、デートで起こったことを全て話した。その間、正晴は黙って聞いていた。


「ふーん。ま、いい感じだったんじゃない? 楽しんでもらえてたみたいだしね」

「そうなら良いんだけど」

「でも、健全な男の子が、好きな女の子とデートしたってのに、間接キスまでしか行ってないっていうのはいただけないなぁ」

正晴の言葉に、つい赤面してしまう。


「間接キス以上に何しろってんだ! てか、だから別に好きとかじゃ……」

「一緒にいてドキドキしたんでしょ?」

「そ、それは」

「認めちゃえって」

「……正晴お前、楽しんでるだろ」

俺が睨みつけると、正晴は楽しそうにケラケラ笑った。
だが、その中には微笑ましそうな表情もかすかに混ざっている。

それが分かってるからこそ話したくないのだが。


「まあ、でもさー」

正晴はどこからか取り出したチョコを口に含みながら、話を続けた。楽しそうな声から一転、暖かい声になる。


「冬の気持ちを俺がどうこう決めつけるべきじゃないよねー。自分で気づかなきゃ意味がないことだってあるわけだし。てことで、冬は冬のやれる限りで頑張ってみたら? 俺はいくらでもサポートするからさ」


そう言って穏やかに微笑んだ顔は、俺から見てもかっこよくて、少し照れてしまった。


「ああ」

俺はそれを隠すように、口元を手で覆って頷く。

正晴も満足そうに一度頷いた。

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