HEROに花束を(完)

ちゃんと言わないと伝わらない。

悠からそう教えてもらったばかりなのに…わたしときたら…


「あっ…。」


慌てて立ち上がった拍子に雑巾がけのバケツが倒れて、水がバシャっと広がる。

ドジだなあ…

小さくため息をついてしゃがみこむ。

ふと時計に目をやれば、いつの間にか30分が経っていた。


みんなで協力していれば、もう終わっていたのになあ…


なんて、今更悔やんでもしょうがない。発言しなかったのはわたしだし、大丈夫って言ったのもわたし。


誰かが言っていた。

声を出さないものは賛成とみなされるって。


本当に、世の中そういうものなんだなあ…って、ちょっとだけ悲しくなったりもする。


悠だったらどうしてたんだろう。

みんなでやろうぜ!って笑顔で言ってたのかな。


水を含んだ雑巾をしぼりながら、しばしの間ぼんやりとする。


何してんだろう、って。どうして止めれないんだろうって。今の状況というよりも、自分の弱さに落胆する。


やっぱりわたしはまだ、殻に閉じこもったままなんだ。
< 104 / 537 >

この作品をシェア

pagetop